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影馬
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幽幻の名の如く 剣を背中に刺され、文字通り地面に釘付けにされた状態のまま、カッシェルはもがいた。 傍らで自身の体を回復いていたシャーリィは、首を回してこちらを向く。ついでにマシンガンの銃口も向けて。 「ねぇ、あまり変に動くとすぐに殺すよ?」 あまりに冷酷で淡白な口ぶり。 自分が何をして、何を言っているのか、この少女は本当に理解しているのか? 「そのままにしておいたら死ぬから、じっとしててね」 言ってることが支離滅裂だ。 真の狂人とは、この少女の様な人間を指すのか? くそ。 馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な。 この俺が、トリプルカイツの一角を担うこの俺が、こんな小娘一人に・・・!! シャーリィ・フェンネスはメルネスとなってこそ驚異的な力を発揮するのではなかったのか? 眼前の少女は、かつて自分達がつけ狙った気弱そうで非力な少女とはまるで違っていた。 人を傷つけること、殺すことなどまるで躊躇していない。 軍の過酷な訓練を受け、生死を分かつ修羅場を幾度も通り抜けてきた自分ですら、 これほど冷酷で残酷な者に出会うことは少なかった。 一体何が、何がこの少女をこうまで変えてしまったのか? 情け容赦なく死を振り撒く少女の姿は、正に修羅だった。 ・・・そうだ、思い出したぞ。 こいつの兄、かつて我が軍にも在籍していたらしいセネル・クーリッジ。 あいつが死んでいた。第一回の放送で、そう告げられた。 この女の動かしているのは復讐心か?それとも、最後まで生き残って死者を蘇らせるという血塗られた希望か? だが、いずれにせよそんな理由だけでこの俺を追い詰めるとは・・・ 気に入らない。気に入らないな!! 「大好きな大好きな兄の為に戦うというわけか?」 カッシェルは背中を潰された体勢のまま、首だけを上げて声をかけた。 少女の体がビクンと跳ね、ゆっくりと体をこちらに向ける。 「くだらない、くだらないな。このゲームに乗ることはいいが、誰かの為に動くなど馬鹿げている」 吐血交じりに、皮肉めいた口調で少女を非難する。 少女は凍結したまなざしを覆面の男に向けながら、ピクピクと顔の筋肉が痙攣していた。 「そして貴様は甘い。甘すぎる。この俺を殺せる時に殺さなかったのが、貴様の敗因なんだよ」 口元を歪めてにやりと笑う。既に激痛で意識が飛びそうだったが、ここが正念場だ。こらえて見せる。 「お前の兄も甘かったんだよ。だから死んだ」 「お兄ちゃんを・・・」 少女はわなわなと震えながらつぶやき、静かにウージーを構える。 銃口が覆面の男の眉間を捕らえていた。 「お兄ちゃんを悪く言わないでよっ!!!」 マシンガンの引き金が引かれようとした──その時。 少女の動きが止まった。動作から表情まで、全てが凍りついたように止まった。 いや、それだけではない。風に揺れる草花も、空を舞う小鳥も、全てが静止していた。 正に、時が止まった様に・・・いや実際に時は止まったのだ。 アワーグラスの効果により、カッシェルの視界内のもの全ては時を奪われた。 「くっくっくっくっく・・・」 地面に串刺さった体勢のまま、カッシェルは不気味に笑った。 密かに後ろに回した手によって発動させた、時空を操る透器。 これまで幾多の場面であえてこれを使わなかったのは、 これは絶体絶命の危機、或いは千載一遇の好機にでくわすまでは使用することを封じていたからだった。 しかし今のこの状況、最早ためらうことは出来ない。 彼は封印を解き、時を止めたのだった。 少女の時が止まっているのを確認しながら、背中に刺さる剣を抜きにかかる。 だが、予想以上に難航した。 ショートソードと言うほどなので、刀身は短いはずなのだが、 自身を地面に結びつける力は予想以上に強かった。 あの少女のどこにそんな力があったのか、全く以って気に入らないが、あまりグズグズもしていられない。 早く、早くしなければ。時が止まる効果が途切れる前に! 「ぐぬぅぅぅ・・・」 上に横に体を反らせ、剣を引き抜こうとする。 ブチブチと筋繊維やその他諸々が切れていくのが分かる。 「くぅっ──!!」 ぶしゅっと血の吹き出る音がし、ようやく剣は抜けた。 そしてその剣を拾いにかかる。時はまだ止まっている。 少女の姿を見る。マシンガンを構え、硬直して立ち尽くしている。 彼はにやりと笑い、一気に距離を詰める。 裂けた背中と腹から血と内臓の諸々がはみ出るのも気にしないまま、走って突っ込んだ。 そして剣先を少女の首、頚動脈の辺りを狙って振る。 「・・・斬首」 カッシェルの目に、暗い暗殺者の光が宿った。 その刹那 シャーリィの目に、鋭い狂気の光が宿った。 彼女は瞬時に飛び退き、覆面の男の一閃をかわした。 「なっ・・・にぃぃ!?」 カッシェルの顔に驚愕の色が広がった。 時空の拘束から解き放たれたシャーリィは、隙だらけの男の頭に銃口を突きつけた。 「死んでね。今すぐ、ここから、永遠に」 一瞬の間に、絶望と恐怖がカッシェルの頭を支配した。 もう、ここまでだ・・・どうしようもない・・・ シャーリィが死を呼び起こす輪に指をかけ、ウージーの引き金を強く引いた── カチッ カチッカチッ 「・・・!?」 シャーリィは明らかに戸惑いの表情を浮かべ、手にした銃を見やった。 ・・・弾切れ。 既にチェスター、メルディ、カッシェルと三人に射撃を続けていたウージーサブマシンガンは、 30発の弾丸を尽かせてしまっていた。 そしてその隙を、カッシェルは見逃さなかった。 「はぁぁぁぁぁ!」 地を這いずる様な低音の声を響かせ、男は少女に無茶苦茶に剣を振り回した。 急所を狙う余裕も冷静さも既に無くなっていた。 カッシェルの腕に確かな手ごたえがあった。 咄嗟に腕を上げたシャーリィの肘から手首付近までを一直線に切り裂いた。 少女の腕には赤い一本の筋がはっきりと残る。 そのまま後ろに退く少女。 「はっ、はぁぁぁぁぁ!」 追撃に出る男。 少女が懐から何かを取り出した。 それは鉛筆に見えた。参加者全員に配られた、筆記用具。 シャーリィは鉛筆を握り締め、空中に向かって何かを描き始めた。 あっという間に、青白い光の翼──テルクェス──が生まれ、男目掛け発射された。 ・・・かつてセネル・クーリッジが存命中に案じていたように、 シャーリィは筆記用具を使い水の民特有の力・テルクェスを発生させることができた。 彼女の場合は主にペンを使ってテルクェスを描き、創り出し、対象に向けて撃ちだす。 そしてその翼は威力は低いまでも牽制には充分だった。 「ぬぉぁぁぁ!?」 テルクェスは男の顔面を直撃し、男は一瞬ひるんだ。 シャーリィはウージーを右手に、鉛筆を左手に構えて走った。 男の右手、ショートソードを握る手の甲に、思い切り鉛筆を突き刺した。 鋭い先端部はすぶすぶと肉に食い込み、男の掌に貫通一歩手前まで突き刺さった。 「うわぁぁぁ!!」 悲鳴を上げ、剣を取り落とすカッシェル。 少女は即座に剣を拾い、構え、突き出した。 剣は丁度カッシェルの首の付け根辺りに刺さった。 「あぐぁぁぁ!!」 男は更に絶叫し、恐慌した様に少女から逃げ出した。 首に剣が突き刺さり、血が流れ、右手の甲には鉛筆が刺さり、腹からは血と内臓がぼとぼとと落ちていく。 カッシェルはひたすら走った。走り続けた。 駄目だあいつは。襲うのは諦めよう。無理だ。 別の獲物、そう、安全に、確実に、しとめることができる獲物を探すべきだ。 そうだ、そうすればいい。他に、まだまだ、獲物はたくさん居るはずだ。 俺ならできる、俺はトリプルカイツなんだからな。 早く、早く次の獲物を・・・ 息をする代わりに口から血が吐き出る。段々視界がぼやけてきた。 少女の銃が復活する前に、ここから去っておきたかった。 そしてカッシェルは飛翔した。そのまま空中で彼の姿が消えた。 幽幻の名の如く─── ───水に呑まれて、カッシェルは消えた。 シャーリィは静かに両手を降ろすと、自分の前方、数十メートル先に現れた渦巻きを眺めた。 それは彼女がカッシェルに放った水の上級爪術、タイダルウェーブだった。 何も無かった草原から突如大量の水が溢れ出し、複数の渦潮が流転し、あらゆるものを呑み込んでいった。 荒れ狂う海原が過ぎ去った後、カッシェルは仰向けに倒れていた。 強烈な奔流と水圧によって、彼の体は見るも無残な姿になっていた。 開いた傷口から水が入り、内と外から彼の体は壊された。 手足の間接は不自然に折れ曲がり、腹のあたりはまるで魚の干物の様にぺしゃんこに潰れていた。 シャーリィがゆっくりとカッシェルに歩み寄った。 カシャカシャと、弾を失ったマシンガンに新たにマガジンを装着する。 「・・・・・・ぅ・・・・・・」 首を動かすこと無く、カッシェルの目が僅かに少女を捉えた。 その顔はやはり、残酷で、狂気の光を見せていた。 そしてシャーリィは無言でウージーの銃口を男の頭に向けた。 「今度こそ、死んでね」 そう言い放ち、引き金を引いた。 ぱららっと小気味良い音が響き、吐き出された銃弾が三つ、カッシェルの頭部、鼻から上の辺りを貫通した。 その衝撃で彼の頭蓋が砕け、脳漿をぶちまけた。 シャーリィは自身に回復爪術をかけながら、空を見上げた。 いつの間にか漆黒の空が微かに薄くなり始めていた。 そろそろ日の出なのだろう。 彼女にとってそれは、自分が兄の姿に近づけた証の様に思えた。 彼女はそれまでとは違う、無邪気な、少女らしい笑顔を浮かべて天を仰いだ。 「お兄ちゃん、私、やったよ。お兄ちゃん達ががんばって戦ってたトリプルカイツに、私、一人で勝てたんだよ」 その声も、冷酷さは無く、清々しいくらいに明るかった。ただ、残酷さだけは残っていた。 「これで一歩、お兄ちゃんに近づけた。早く会いたいよ」 シャーリィは満面の笑みを浮かべた。 彼女の足元で、男が着けていた覆面が風に吹かれて宙を舞った。 それはシャーリィの見上げている空に昇っていき、やがて見えなくなった。 【シャーリィ 生存確認】 所持品:UZI SMG(30連マガジン残り3つ) ???? 状態:TP中消費 素直な喜び 頬に切傷(ほぼ回復) 左腕に刀傷(回復中) 第一行動方針:自分の傷の手当て 第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない) 現在位置:C4の草原地帯 【幽幻のカッシェル 死亡】 【残り39人】 前 次
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「うっわ、眩しいなぁ~、まだ夕方にもなってなかったかぁ」 森から抜けだしたら辺りはまだとても明るかった。 地上の、バッツの周りで起こってる事など知りもせずに、ただ、いつもの様に太陽は真上から大地を照らし続けている。 バッツは眩しい辺りを細目で見回しながらボコへ近づく。 「クエッ!クエッ!」 チョコボ特有のちょっと間の抜けたような愛らしい鳴き声がバッツを歓迎した。 「お~、た~だいま~」 「クエッ!」 ボコは嬉しそうである。 一方バッツはボコに笑顔を見せるものの、心の中ではまだレナとガラフの事が引っ掛かっている。 しかしボコにはその事を知らせない。バッツは笑顔を作っていた。 一瞬ボコの顔が曇ったような気がした。 「さ、とりあえずまたどっかフラっと行きますか・・・」 バッツはボコに乗る。 「クエッ」 相棒の返事がいつもより弱い気がした。 ボコが自慢の快速で飛ばして行く。しかしバッツは心の中では相変わらず自問自答。 いつもならボコに乗りながら爽やかな風を感じられる。 しかし、今はそれどころではない。 ただバッツは自問自答の答えを導き出そうとしていた。 と言うより、「(もう答えは見えているだろう?)」 そう感じていた。 ―――――――――レナ。ガラフ。風の神殿。あてのない『旅』―――――――― 「うわあああぁっ!」 次の瞬間、いきなりボコが止まった。 バッツは当然、前方に投げ出され、切り立った岩盤に軽くぶつかって止まった。 「・・・いってー・・・」 軽く打った背中を摩る。軽いとは言え、打ったのはごつごつとした岩盤。 その痛みはなかなかのものである。 「っったく、何で急に止まるんだよ!」 バッツは当然ボコを責める。通常ではありえない急ブレーキ。非常に危ないものだ。 「うっ・・・」 しかしボコの顔を見たバッツはその威勢が消え、逆に怯んでしまった。 ボコが珍しく怒っている。鋭い目。乗り物用の鳥とは言え弱いモンスターなら倒せてしまうぐらいの戦闘力はある。 そして、バッツはボコが怒っている理由を容易に理解した。 バッツはすぐに心情が顔に出る。3年の付き合いがあるボコがそれを見破るのは簡単な事。 そこにこの1人と1羽の固い信頼関係が見て取れる。 「わかったよ・・・そりゃ、お前に隠し事するのが野暮ってもんだったなぁ・・・」 バッツは一本獲られたと言う表情でボコを見た。 「ここらは最近モンスターが出やすいし、じいさんと女の子だもんな」 バッツは答えを出した、というより最初から答えはひとつしかなかった事を相棒によって確信した。 「クエッ!」 ボコはまたいつもの優しい顔に戻っている。 「よし!追いかけよう!お前の足なら絶対間に合う!」 そうして2人と再び逢う決心を固めた次の瞬間、不気味な地響きが辺りを包んだ。
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「俺は一度死んだ男だ。そして復讐の為に地獄の果てからよみがえったのだ!」 国籍:ロシア、シベリア 性別:男 職業:暗殺者(元特殊部隊隊員) 誕生日:12月28日 年齢:20歳 身長:170cm 体重:205kg 血液型:A型 趣味:銃いじり 特技:射撃 好きな食べ物:ビーフストロガノフ、ウォッカ 嫌いな食べ物:甘い物 格闘スタイル:コマンドサンボ+サイボーグ技術 異名:復讐の人間兵器 通称ブラディ。 特殊部隊隊長を父に持ち、父の跡を継ぐために、幼い頃から特殊部隊に入隊しようと死に物狂いで訓練を重ね、14歳で特殊部隊に入隊する。 コマンドサンボの才能に秀でており、数々の強敵をねじ伏せてきた。 しかしウクライナにて敵のアジトに潜入した際に、アジト諸共爆破されてしまったことで重傷を負ってしまう(顔や背中についた傷跡はその時の物)。 その後応急処置の為に研究所に預けられ、サイボーグ化手術を施されることで生き延びたが、 アジトを爆破させた首謀者が父だと知った彼は、自分を裏切り捨て駒にした父へ復讐するために暗殺者となる。 ちなみにサイボーグ部分の燃料はウォッカ。 ルガール運送で働いている噂があるらしい。 (以上、付属の「キャラ設定」より引用・改変) 亜乱田堂氏のコンプゲー『ワールドファイティング・ジェネレーション』のキャラクター。 彼女に特殊部隊時代の同僚だった少女がいたが、基地の爆発に巻き込まれて死亡している。 モデルは『アンデッドアンラック』のアンディ。 元々は同コンプゲーのレニー・ルボンの予定でトンファー使いの特殊部隊という設定だった。 後にコンパチキャラを作ろうと思い立ち、レニーの衣装と似合いそうなロシア人キャラを作ったという。 ホームステージ「赤の広場」はロシアの首都モスクワに実在する広場。 城のドットは描画に苦戦したとの事で、色分けが細かい。 性能 ATKが150という高い数値を持つパワーキャラ。 コマンド技は、ボタンによって3段階の速度で撃ち分けられる所謂ロケットパンチな飛び道具「シルバーナックル」と、 ボタンによって3段階で変速する突進技「ロケットドライバー」、当て身技の「トラップホールド」が存在。 必殺技はロケットドライバーの強化版「アトミックドライバー」と、トラップホールドの強化版「トゥホールドクラッチ」。 超必殺技の「アトミックナックル」は9割持っていく威力を誇る。 ジャンプ力は低いが、二種類ある当て身でカバーすると良いだろう。 イントロでは足からジェット噴射で飛んでいるが、それでジャンプはしないんだろうか AIは未搭載だが、IX氏によるAIが公開されている。 「この傷跡の痛みは消えねえ…あの時捨て駒にされた恨みを晴らさない限りな!」 出場大会 【MUGEN大祭】特盛りシングルトーナメント
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背中合わせ 扉をぶち破った俺の目に飛び込んできたのは、剥き出しの背中に焼印を押し付けられている彼の姿だった。 「他人の背中というものは、こんなにも温かかったのですね」 彼はそう言って、こちらに身体を傾けてきた。 俺は少しだけ前のめりになったが、ぐっと腹に力を入れて押し留まる。 すると彼はくすくす笑いながら、更に体重をかけてくる。まるで子供がふざけているようだ。 「おい」 軽く諌めると、背中から「すみません」と苦笑交じりの声が返って来た。 「こういう事は初めてなものですから、とても新鮮で」 「俺だってこんな状況ねえよ」 男二人、後ろ手に縛られてまとめて鎖でぐるぐる巻きに拘束される状況など。 目の前にある鉄の扉に思い切り蹴りを入れた。当たり前だがびくともせず、足に痺れがはしる。 全身に力を込めてみたが、鎖の戒めが緩むこともなかった。人の身ではどうすることも出来ない。 不自由なことこの上なかった。暴れだしたい衝動を舌打ちしてやり過ごす。 と、こちらが大きく動いた所為か、背中越しに彼が小さく呻いた。 俺ははっとして緊張させていた背の力を抜き、後ろに問いかける。 「傷むのか、背中」 「いえ、大丈夫です。なんともありません」 すぐに答えが返ってきたが、それはきっと嘘だ。 あのとき。 牢獄に踏み込んだあのとき、彼の背中にあった羽は既に斬り落とされていた。 純白の、綺麗な羽だった。 俺はその柔らかさがとても気に入っていた。俺には無いものだったから。 本人には一度も言ったことがなかったが。 今、その羽のあった場所には、忌々しい烙印が焼き付けられている筈だ。 背中越しにあの焼印の熱が伝わってくるような気がして、俺は顔をしかめた。 「……勿体無いことしたな」 半分は本音、半分は誤魔化しで、俺はそう言った。 彼は可笑しそうに「勿体無い、ですか」と笑う。 「そうですね。貴方に撫でて貰えなくなるのは、確かに少し残念です」 彼らにとっては命に等しいものの筈なのに、背中から聞こえる声に陰りはない。 「けれど失わなかったとしても、撫でてくれる人がいなくなっては、意味がありませんから」 どちらにせよ同じことです、と軽い調子で返される。 一体、羽と何を天秤にかけたのか――かけさせられたのか、俺は訊かなかった。 聞けばおそらく、俺は衝動を抑えられなくなる。 きつく奥歯を噛み締める俺をよそに、「それに」と彼は言葉を続ける。 「すっきりしたお陰で、こんな風に貴方の背中に思い切り寄りかかれるようになりました。 誰かに背中を預けることがこれほど温かくて心地よいものだなんて、羽があった時は分からなかった」 「…………」 「本当に、貴方と出会ってから、私は色々なことを知ってばかりです」 ふと、後ろで縛られた手に彼の指先が触れた。探るようにして、優しく掌を重ねてくる。 「貴方が助けに来てくれて嬉しかった。私は幸せ者ですね」 「それは、結局のところ助けられなかったことへの嫌味かよ」 「そうですね。半分くらいは」 からかうような声と共に、背中が少しだけ揺れた。俺がよく使う言い回しを真似たつもりらしい。 「お前な……」 「でももう半分は本心です。最後の最後まで貴方と一緒に居られて、私は本当に幸せだと」 指と指を絡め、強く握り締められる。 「ありがとうございます」 しっかりとした声音が、牢の中に響いた。 その声に処分を待つ者の怯えや恐れは感じ取れなかった。俺への恨みの響きも無い。迷いも痛みも後悔も。 どんな顔で感謝の言葉など紡いでいるのか。確かめてやりたかったが、この体勢ではそれも叶わない。 ただ、彼の体温が伝わってくるだけだ。 なぜ『奴ら』が俺とこの男を引き離さずに二人一緒に縛り上げて閉じ込めたのか。 簡単だ。この密着した状態では『化け物』は本性を現さない。 鉄の扉を切り裂く鋭い爪も、狭い壁など吹き飛ばせる刃の如き翼も、 現したと同時に背にある者の身体を傷つけ引き裂いてしまうだろう。 だから愚かな化け物は本性を現さない。理性を総動員して、本能に近い破壊衝動を必死で抑え込む。 狙いは半分は成功している。しかし、もう半分は失敗だ。 奴らは正しく理解していない。 自分達が切り捨てた『同胞』は、『化け物』の理性の留め金であるのと同時に、引き鉄でもあることを。 不意に泣き出したい衝動にかられた。 これから男が続けて何を言おうとしているのか、俺には察しがついている。 処刑を待つこの絶望的な状況下で、彼がなにを望むのかもわかっていた。 聞きたくないと思った。しかし、聞きたいとも思っていた。 俺は彼の何もかもが好きで、だから背中の彼を感じながら、ただ目を閉じる。 「もう我慢しなくて良い。さあ、貴方は此処から逃げなさい」 羽を失ってもなお凛とした声が、俺に命じた。 キャリアとノンキャリア
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皮膚アレルギーも内蔵から だいたい、皮膚アレルギーって見た目もアレですけど、 あの痒みが一番ツライですよねー。 病院嫌いの私でも、さすがに、痒みが強くなれば、 皮膚科に行くようにしてるんですが、 皮膚科で処方されるお薬って、 皮膚だけに、塗り薬のイメージがありませんか? 私が、初めて皮膚科に行った時は、 お薬は、当然、塗り薬かと思っていたんですが、 飲み薬も処方されて、ビックリしました。 体の内側から、皮膚アレルギーの症状に働きかける。 と、こういう事なんですかね。 でも、アレルギーに限らず、薬って、合う合わない、効く効かないの、 個人差があるじゃないですか。 なので、単純に、他人が効かないと言っていたからと、 信用しない方が良いですよね。 しかし、何を服用しても、効果がいまいちの場合、 薬の効果よりも、自分の内臓を疑ってもいいかもしれません。 なんでかと言うと、内臓の働きが悪くなっていると、 消化吸収も鈍ってきます。 これは、薬にも言えることで、薬の吸収も鈍るんです。 なので、薬が効かないなーと思う場合は、 内臓を元気にする事を、考えて実行すれば、 薬の効き目も良くなるかもしれませんね。 私の場合、皮膚アレルギーの薬ではなく、 ある病気の薬を、毎日、服用してるんですが、 最近、効果がいまいちに感じるのは、内臓のせいかのかしら?? >>皮膚アレルギー
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CASE #43 40代会社員の男性。接種前に結石の手術。 Jul 13, 2021 珊瑚状結石とのことで完治するまで入退院を繰り返しながら複数回手術することになったのですが手術と手術の間は背中になんか手術用の器具が刺さりっぱなしになるみたいでサイバネティクス感ハンパない Aug 28, 2021 救急搬送されて病院に逆戻り Sep 12, 2021 今週また手術入院。日々のケアも面倒くさくて実はちょっと精神的に疲弊してる Sep 21, 2021 帰宅したけど体力と気力が限界。手術入院おそるべし(´д`) Sep 22, 2021 今日は体調が悪くて外に出られなかったから明日MGバスター探ししたいけど行っても大丈夫かな…… Oct 8, 2021 どうでもいい話なんだけど、手術終わってもう2週間くらい過ぎて以前より健康になったはずなのに仕事してると体力1日もたないし1週間もたなくてどこかで休んじゃう。そんなに体力とか落ちるものなのかなあ今後がすごく不安 Oct 28, 2021 手術入院から退院して1ヵ月経過しましたが今でも体温が以前より高くて37.0℃くらいをウロチョロしてるんです。今日は夕方あたりから明確に肌が痛かったりフラフラしたので帰宅後ロキソニン飲んで横になってます。とにかくコロナとか風邪じゃなきゃいいですたぶん大丈夫 Nov 7, 2021 朝イチで1回目のワクチン接種してからずっと横になってました Nov 29, 2021 ここ3~4日くらい頭痛とか喉が痛くないようで痛いような熱はないのに熱っぽいようなたぶん健康なのに風邪っぽい症状が出ていて本当に体調が悪いのか病は気からというやつなのか自分でもわからなくなってる。ロキソニンなどの鎮痛剤は効く Nov 30, 2021 2回目のワクチン接種から14時間経過 帰宅! あー肩痛いすっげー痛い手も熱いしコレぜったい熱出てる高熱ある! そうだ体温計! 体温計はどこですか! 体温計「36.4」【結論】意外と丈夫にできてる Dec 1, 2021 早退しました。薬の効果が切れた瞬間にダメでした。また効いてきて楽になりました。このまま横になります Jan 24, 2022 秋口の手術以降、体調が安定しなくて先日も内臓が炎症おこして抗生物質飲んだり眠れなかったりでなんとなく気分的にやられているせいかもしれない。何かに夢中になってる時とそれ以外の気分的な落差が激しい。なんか余計なこと考えて眠れないし明日のこととか考えると不安にもなる Jun 6, 2022 入院の際に言われたのがどうやら内臓の機能が弱いらしく痛風になったりする可能性があるということで薬を処方してもらっている。クエン酸である。1日3回たまに飲んだか飲んでないかわからなくなり余計に飲んでしまうこともあるのだが、「クエン酸オーバードーズ」って書くとなんかのタイトルっぽい Nov 16, 2022 健康診断で何度リトライしてもアベレージ160から全く下がらず僅かに上昇を続けたため何の自覚症状もないのにそのまま強制的に病院送りに。おまけに「最近どこかおかしい感じだった」などと言われる始末 Replying to @nxxx こんばんは。上の血圧ですね。なんか調べれば調べるほど怖いこと出てくるので薬もらいます。お互い身体を大切にしましょう。お声掛け下さりありがとうございましたm(_ _)m Nov 19, 2022 なんだろう。血圧下げる薬飲んだら頭が軽い。睡魔が襲ってこない。まさか本当にそんなことが。血管拡張する薬だった。一度に飲む薬が6種類になってしまった。腎臓の薬2種類と胃の薬2種類と鎮痛剤と血圧の薬。一体何と戦っているんだ Nov 21, 2022 昨日血圧を下げる薬を飲んで寝て今朝出社してワクワクしながら血圧測ったら上が120くらいでお薬すごいってなった Dec 5, 2022 超絶体調崩して横になってる。胃とか脇腹とか腰とか激痛すぎてどこが痛いのかもすでによくわからなくなってる上に発熱がありなんていうかもはやこれまで感すごい。まあ寝てれば治る気もするけど Jan 28, 2023 今日は病院で血液検査があるから予約時間の1時間前に来るように言われて朝の9時から血液検査だったのだけど、その後まったく診察室に呼ばれず後から来た人たちがバンバン卒業していく様を見せつけられ予約時間から1時間半経過したお昼前くらいに受付の人に声をかけたら、なんと事務処理の過程で些細な行き違いがありずっと忘れられてたとのことまあそんな日もあるさハハッ Apr 19, 2023 マジ再発勘弁してほしい。再入院にならなかっただけツイてる May 6, 2023 ラーメン食べてから目眩がひどい。さっきダイソーで立ちくらみして意識飛びかけた。 ラーメン食べるのに体力を使いすぎたのかもしれない。トッピングで煮玉子を追加したし。ちょっと横になります。確かに血圧高くて薬を飲んでいるのですがブラックアウトしそうになったのは初めてでした。横になってたら落ち着きました Jun 4, 2023 薬が本当に効いているのか疑わしくてというのも実はもう健康体なのではないかと一昨日から薬を飲むのをやめてたら、本日ちょっと歩いたたけでめまいはするわ立ちくらみはするわ胃というか食道は如実にダメですごく効いていたことを実感して、誰もいない部屋で何故か空間に謝った Jun 14, 2023 昨日の深夜のこと。足が攣った。しかも両足。足首や足の指を動かして対処しようと試みるもスネの外側・ふくらはぎ・足の裏どこかがを伸ばすことができず必ず痛みに襲われる。抗うこと1時間。魔のトライアングルから生み出された負の連鎖に両足をズタズタにされ、会社遅刻した。両脚の膝から下の感覚がなくて冷たい感じがするのは夜中に攣った時のダメージなのか。 Jun 21, 2023 めまいの治療で音楽聞けないの辛いな Jun 24, 2023 血圧を低くする薬が2種類 耳鳴りとめまいの薬が2種類 肝機能を補助する薬が1種類 胃酸抑制の薬が2種類 上記7種類で計8錠を一気に飲む これはある意味オーバードーズではないのだろうかと薬剤師さんに聞いてみたところ「同時服用については問題ありませんね」と返答をいただいた。まだいける気がする。 でも血圧は普通以下まで下がったし肝機能も近年では久しぶりに正常値をマークしたし食道炎は治まってるし胃の痛みはなくなってきたし平衡感覚もだいぶ戻ってきて、服用やめたらどうなっちゃうんだろう あ、胃酸抑制の薬はガチ。飲まないとやってらんない。飲まないよりも飲んだ方がメリットが多そうなので服用を継続しようと思うのだけど、病院で診察してもらわないと処方箋を発行してもらえないので薬欲しさに診察リピート行ってる感ある Aug 6, 2023 結石痛が酷い。手術しなかったほう。前回の手術の際は右側の腎臓を埋め尽くしていた女性の握りこぶしくらいの大きさの結石を取り除いた。そして検査で左側の腎臓にも小さな粒が2個3個あることがわかっていた。腎臓内部にあるうちは痛くならないし、自然排出されるから大丈夫と言われてホッとしてたのたけど、やっぱりめっちゃ痛いやんけ。とはいえ自分の場合はケアしないと数年に1度必ず発症することが数年前の手術の際に判明しており、とある成分を分解できない体質らしくその成分を放っておくと結晶化しちゃう。確かそんな理由だったと思うけど予防薬なんかも数ヶ月分も処方されてたりする。まあでも1日4回とか飲むの面倒で忘れちゃう 薬の効果が切れた時どうなるか心配。ストックはあと7個。それまでに治って下さいお願いします Oct 1, 2023 寝たくないけど寝ないと心臓に負担がかかる。なんだか少し自覚ある Oct 9, 2023 耳鳴りがする Oct 22, 2023 風邪ひいて1日中寝てた。もったいない Oct 24, 2023 ところで風邪ひいちゃって6日目くらいになるのにウイルスが上り調子で熱はないのに頭痛はするし咳が全然止まらない。呪いだ呪い。病院では治せない Oct 25, 2023 風邪しんどい。熱ないのに寒い Oct 26, 2023 赤外線体温計で36.8なのに普通の体温計で測ったら38.3。このしんどさで平熱はあり得ないと思っていたらやっぱりなあ。絶対熱あるよなあ。 なんか吸い込む薬と解熱剤と咳止めを使ったら昨日までのダルさが嘘のように吹き飛んでよくわからない万能感と無敵感ある。 無敵感続かなかった。寒い。 インフルでした。コロナ予防でマスク着用と手洗いうがいを毎日実践して手指消毒も習慣となりインフルは撲滅されたものだと思っていたのにまさかのインフル。 Oct 28, 2023 ちょっと食べ物を買いに行っただけなのに体力が底を尽きてしまった。熱は下がって平熱なのになんか胸部がピリピリするというかなんというかイマイチすっきりしないというか景色がぐるぐるして起きていられないというか。明日アキバ行きたいのに← Oct 29, 2023 おかしいなあ。昨日は平熱だったのに今日は頭が重たいから熱を測ったら38度あった。なんでどうして。インフル復活ってあるの??それともやっぱり呪いか何か? Oct 31, 2023 インフル後の初出勤で通勤途中に貧血を起こし始発を乗り継いで座席に座りながらもぐるぐる回る景色に休憩を余儀なくされたのだけど普段から余裕をもって家を出ているので普通に会社に間に合ってしまった。しかしまあ今日は1日辛かった Nov 10, 2023 自分のTL見直してみたらファッションドリーマーの画像だらけだった。ストーリーも何もなくてただ着せ替えして写真撮りまくってるだけなのに中毒性ハンパない。ストーリーや強制クエストみたいなの全く無いから勝手に妄想を膨らませていいまである Nov 19, 2023 家にいると横になるかファッションドリーマーやるかの2択になってる Nov 23, 2023 ところで今週はめちゃくちゃ残業が多かったせいか今日は起きていられなかった。1日損した気分。1日中すごく眠い Dec 31, 2023 数の子の塩抜きの最中なんだけど寝ちゃっても大丈夫だろか。先日(10月)のインフルエンザ以降、なんとなくだけど味覚が鈍くなってしまったような気がする。何を食べても薄味に感じてしまう。故に塩抜き加減がわからん。まだ2回目に突入したばかりなのに、もういいかな……ってなってる Jan 5, 2024 飲んでる薬のせいなのか夢を見ることがなくなった気がする Jan 12, 2024 朝から喉が痛いんだけど、まさか風邪か。なんか眉間も痛いし
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このページはこちらに移転しました サンセット・ラヴ 作詞/カリバネム もしも明日 君が夕焼けになったとしたら 今もまだ大切な思い出と やっとさよならできるかも 例えば どうかな そういうのは 抱きしめたいよ 君と 背中の輝くキラキラを 永遠と似てて ちょっと子供じみた未来を 僕は探してた 体中を 君の大好きな言葉を飾って 痛みとかその辺の邪魔物も 全部うやむやにしたのさ 笑い飛ばそう 何もかも 抱きしめたいよ いつか綺麗な姿に変われたら 何だって出来る そんな気がしてるよ この頃 ユメの話です 抱きしめたいよ 君と 背中の輝くキラキラを 永遠と似てて ちょっと子供じみた未来を 僕は探してた
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六人いた。うち一人は倒れていて、四人は知らない男だった。 無双。いちおう無事のようだ。広い空間に躍り込んだとき、全員の目がこちらを向いた気がした。 無双。それからその前後に、背の小さい男が二人。やや間をあけて、がっしりした男、それからまた間をあけ、膝立ちの、細身の男。無双の援護に行くには距離があるし、間を開けた二人が邪魔だ。 そう思ったときには、脇をすり抜けるようにして、量子が跳んでいた。がっしりした男に向かう。 場慣れしているはずがないくせに。魔界は小さく舌打ちして、細身の男に向かった。 男。間合いに近付いた時には、中腰に構えていた。右腕から、かなり出血しているように見える。 だが、手強い。肌で感じた。半端な相手ではない。プロ。頭によぎる。同時に、別のものもよぎった。かつての仲間。マスターと不二子。二人は無事なのか。 いまは、この場をどうにかすることだった。無双がここにいるということは、無双の狙いはもう少しで達成されるということだ。 自分の事件ではない。だが、こいつは自分の相手だ。そう決めた。 横に二歩、ずれる。男はこちらを見てはいるが、動かない。爬虫類のような、いまいち表情の読めない男だ。一歩踏み込んだ。 間合いを詰めるなり、左拳がきた。ぎりぎりでかわす。すぐさま裏拳。頬に食らったが、こちらも相手の頬にたたき込んだ。互いによろける。 立て直したところで、下段の蹴りがきた。さらに脇腹。それほど重くはないが、腹のなかを掻き回されたような気分になって、息が詰まった。 そこに、なにか。食らう前に、地面を蹴った。男にぶつかる。右拳を腹にたたき込んだ。耳元で、男が息を吐いた。 もう一発。そして膝蹴り。相手の腿の中間あたりに入った。思った瞬間、肩を突き飛ばされ、腹に食らった。 息が詰まりかけたが、後ろによろけたおかげで、なんとか空気が入ってきた。はあっ、と大きく吐く。男も、肩で息をしていた。 同じか。いや、出血があるぶん、向こうのほうが不利のはずだ。どれだけの傷なのかは、服に隠れてよく判らない。 ふいに一歩、男が引いた。痩せた顔が、何か思い出したように動く。なんだ。 男は二歩下がり、いきなり背後に走り出した。コンテナの隙間の道。逃げた。そう思うのにやや間があいた。追って、コンテナの隙間に入る。 男は速かった。足はかなり速いほうだが、同じくらいかもしれない。手負いとは思えなかった。だが、少しずつ追いついている。 コンテナをいくつ追い抜いたのか、いきなり男が立ち止まった。蹴り。来ると判り、体を捻ったが、男のかかとは左肩に食い込んできた。指先まで、電気が走ったような痛みが抜ける。 体勢を崩した右頬を殴られ、後方にのけ反る。そこを、腹、腿と、さらに二発蹴られた。 くそったれ。三度目に、腹に来た蹴りを抱え込み、押し飛ばした。男が尻餅をつく。このやろう。 追って蹴る。二回で、右足を掴まれた。半回転して、左足の踵を、相手の頭めがけて振りおろした。だが、男は足を放し、そこから消えた。踏み込んだ右を軸に、左足。かわされた。 足が止まった。男は四つん這いのままだが、なぜか追撃できなかった。 「なあ、おい」 不意に、男が喋った。意外と高い、粘り気の強い声。 「お前が誰だか知らねえけどよ、やり合う意味もねえんじゃねえか」 「誰だか知らねえのにか」 男は、唇の片側を吊り上げて、鼻で笑った。 「俺が誰だかは知ってるのよ、俺ゃ」 いいながら、男が立ち上がる。 「仕事でやってんだ。お前は違いそうだな」 間合い。わずかに遠い。お互い、不意打ちはできない。少なくとも拳では、だ。足はどうか。 「答えたくねえってか。まあいいさ。じゃあこういうことよ」 男が、左手を腰にあて、右手のひらを低い位置で開いてみせた。 「俺はあのアマをぶっ潰せりゃいいんだが、そりゃどうも無理そうでな。だからこれ以上なんかやるのは割にあわねえ。損ばっかりでな」 男は、少しだけ右腕の怪我をみた。 「そこにきてお前よ。お前とやり合うのは割にあわねえどころか、意味もねえ。この辺りにしねえか、おい」 「なるほどな」 「お前にだって悪い話じゃねえだろう」 構えを解いて、両手を腰にあてた。男の笑いに、下卑たものが混ざる。 「ずいぶん」 「ああ?」 「安っぽいやつだな、お前」 男の顔に張り付いていた笑みが消えた。かわりに滲み出てくる、凄み。いや、なにか凄惨なもの。 「残念だ」 言った瞬間、男の左手が背中に回った。こちらも回す。 回した手を前に突き出したのは、ほぼ同時だった。相手の手の中に、鈍色に光るものがある。オートマチックタイプの銃。 「へえ」 男が、唇の片側を吊り上げて言った。どうやらこういう笑い方らしい。 「いいおもちゃを持ってるじゃねえか、え。どこで買ったんだ、あんちゃん」 こちらの手にあるのは、銃と似たシルエットではあるが、まったく違うものだ。見た目にも、たいしたものではない。 だが、これがたしかに人を殺していた。一撃。どういうものなのか判らないが、撃てば、威力はある。 「撃てば、お前は死ぬぜ」 口にしてみた。男。やはり、笑っている。 「死ぬぞ」 「やってみなよ、え。いいおもちゃだからな、そりゃ」 不意に、破裂音がした。それと同時に、右太股をなにかが通り抜けた。膝が折れる。 何が起きたのか。アスファルトがそばにあった。呻き声。自分の声である。それを聞いてから、猛烈な痛みに襲われた。 撃たれた。そう気付いたのは、男の笑みを見上げてからだった。 「撃てやしねえくせに」 全身からいやな汗が噴きだしている。暑いはずなのに、背中のあたりに寒気がはしる。太股。撃たれたあたりを左手で必死に掴んだ。右拳で、左手を押さえつける。 指の間から漏れ出してくる、血の感触。とにかく、なんとかして止めなければ。 「お前、あれの男かなんかなのか、おい」 男の爪先が、腹に食い込んできた。 「ざまがねえな、お前」 さらに、腹。だが、あまり痛みはなかった。苦しさも、たいしてない。からかっているのだ。足の痛みと熱さが、怒りで一瞬、弱くなった。 いきなり、髪を掴まれた。引き上げられる。弱くなった痛みが、また暴れだした。男の顔。唇の片側を吊り上げた笑みではなかった。亀裂のような笑み。 「悪ぃがよ、あの女にゃ勝てなくても、お前とは違うのよ」 こいつは。腹の底でなにかがうねっているような気分になった。痛みがそれを、さらに掻き回す。 頭を後ろに飛ばされた。コンテナ。頭はぶつけなかったが、背中を強く打ちつけて、一度呼吸が止まった。足が痺れる。 「ちょっかい出さなきゃ死ななかったんだぜ。後悔するんだな」 また銃声。今度はすぐに痛みがきた。右肩。頭の奥が熱くなり、背中が冷たくなる。傷口の内側で、何かが暴れ回っているような感じだ。 今まで感じたことのある痛みではない。はっきりとそう思うことが、かえって意識を束ねている。この男。怒りや憎しみが、恐怖も抑えていた。 激痛のなかに、なにかはっきりしたものがあった。傷口の内側だけではない。自分のなかで、何かが暴れはじめている。 頬を、なにか硬いもので張られた。 「馬鹿だよ、あんた」 男が、前髪を掴んで、顔を近付けてきた。いつの間にか、しゃがんだのだろう。 馬鹿はお前だ。言ったつもりだが、口には出なかったのかもしれない。男が、なんだという顔をした。 そうしていればいいさ、慢心野郎。 右の人差し指を曲げる。反動はほとんどなかった。男が、一周顔を引きつらせたと思うと、あっと声を発した。 男の右肘あたりに当たったのだ。みるみる血がひろがってゆく。水気の多い、小さな破裂音。聞いていた。男が、また声をあげた。 銃。右手から取り落としている。 「てめえっ」 男が、右腕を抱え込みながら、顔をあげた。苦痛が張り付いたような、歪んだ顔。爬虫類のような顔は吹き飛んでいる。 残酷なものがよぎった。腕をあげる。痛みが、なぜか消えた。 「待てっ」 上体を持ち上げて男が言い終わる前に、引き金を引いた。一瞬、男の体が折れた。同時に、腹に染みがぱっとひろがった。シャツが内側から、見る間に膨らんでゆく。 男が、掠れた呻き声をあげて、尻餅をついた。そのまま、コンテナによりかかる。そしてそのまま、男は動かなくなった。 ふと見ると、伸ばしきった右脚の踵まで、男の血が押してきていた。いや、これは自分の血かもしれない。どこまでがどっちの血か判らなかった。 勝った。血のにおいが鼻をついたとき、ふと感じた。 だが、無双は。無双はどうなったのか。そして量子は無事なのか。ヤマは。 不意に、傷口が痛んだ。ひとのことより、自分をどうにかしなければ。思ったが、それもすぐに消えた。 死ぬのだろう、俺も。それを、ただあることとして受け止められるような、そういう気持ちになっていた。 あいつもこういう場所で死んだ。いやな縁だが、そういうものかもしれない。 一度、目の前が暗くなった。 マスター。生き残っているだろうか。お前ひとりに背負わしちまうことになるな。すまないが、頼むぜ。 日差しが、肌を焼くようで痛かった。顔だけ、左に背ける。 人がいた。気のせいか。いや、こちらに向かってくる。体の半分ほどが日に当たって、そこだけ浮かび上がっているようだった。スーツのジャケット。 高城だった。 「修羅場だな」 いつの間にか、高城は脇まできていた。 「見たくない顔だ」 「頭ははっきりしているようだ」 死ぬ前に見るのが、この辛気臭い顔か。うんざりしたが、そういうものかもしれない。 「死なせんよ、お前は」 複数の足音が聞こえた気がした。迎えがもう来てる。高城。意識が遠のいた。 「量子が」 「いるのか、この先に」 頷いたつもりだったが、頭は動かなかった。だが、高城はわかった、と言った。 「お前は先に行って、休んでいろ。あとは私がやろう」 この野郎、凄みのある声を出しやがって。高城の背後に、黒い影がゆらめいて見えた。 影。そう思った途端、目の前が真っ暗になった。
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五人いた。うち四人は知らない男だった。 無双。いちおう無事のようだ。広い空間に躍り込んだとき、全員の目がこちらを向いた気がした。 無双。それからその前後に、背の小さい男が二人。やや間をあけて、がっしりした男、それからまた間をあけ、膝立ちの、細身の男。無双の援護に行くには距離があるし、間を開けた二人が邪魔だ。 そう思ったときには、脇をすり抜けるようにして、量子が跳んでいた。がっしりした男に向かう。 場慣れしているはずがないくせに。魔界は小さく舌打ちして、細身の男に向かった。 男。間合いに近付いた時には、中腰に構えていた。右腕から、かなり出血しているように見える。 だが、手強い。肌で感じた。半端な相手ではない。プロ。頭によぎる。同時に、別のものもよぎった。かつての仲間。マスターと不二子。二人は無事なのか。 いまは、この場をどうにかすることだった。無双がここにいるということは、無双の狙いはもう少しで達成されるということだ。 自分の事件ではない。だが、こいつは自分の相手だ。そう決めた。 横に二歩、ずれる。男はこちらを見てはいるが、動かない。爬虫類のような、いまいち表情の読めない男だ。一歩踏み込んだ。 間合いを詰めるなり、左拳がきた。ぎりぎりでかわす。すぐさま裏拳。頬に食らったが、こちらも相手の頬にたたき込んだ。互いによろける。 立て直したところで、下段の蹴りがきた。さらに脇腹。それほど重くはないが、腹のなかを掻き回されたような気分になって、息が詰まった。 そこに、なにか。食らう前に、地面を蹴った。男にぶつかる。右拳を腹にたたき込んだ。耳元で、男が息を吐いた。 もう一発。そして膝蹴り。相手の腿の中間あたりに入った。思った瞬間、肩を突き飛ばされ、腹に食らった。 息が詰まりかけたが、後ろによろけたおかげで、なんとか空気が入ってきた。はあっ、と大きく吐く。男も、肩で息をしていた。 同じか。いや、出血があるぶん、向こうのほうが不利のはずだ。どれだけの傷なのかは、服に隠れてよく判らない。 ふいに一歩、男が引いた。痩せた顔が、何か思い出したように動く。なんだ。 男は二歩下がり、いきなり背後に走り出した。コンテナの隙間の道。逃げた。そう思うのにやや間があいた。追って、コンテナの隙間に入る。 男は速かった。足はかなり速いほうだが、同じくらいかもしれない。手負いとは思えなかった。だが、少しずつ追いついている。 コンテナをいくつ追い抜いたのか、いきなり男が立ち止まった。蹴り。来ると判り、体を捻ったが、男のかかとは左肩に食い込んできた。指先まで、電気が走ったような痛みが抜ける。 体勢を崩した右頬を殴られ、後方にのけ反る。そこを、腹、腿と、さらに二発蹴られた。 くそったれ。三度目に、腹に来た蹴りを抱え込み、押し飛ばした。男が尻餅をつく。このやろう。 追って蹴る。二回で、右足を掴まれた。半回転して、左足の踵を、相手の頭めがけて振りおろした。だが、男は足を放し、そこから消えた。踏み込んだ右を軸に、左足。かわされた。 足が止まった。男は四つん這いのままだが、なぜか追撃できなかった。 「なあ、おい」 不意に、男が喋った。意外と高い、粘り気の強い声。 「お前が誰だか知らねえけどよ、やり合う意味もねえんじゃねえか」 「誰だか知らねえのにか」 男は、唇の片側を吊り上げて、鼻で笑った。 「俺が誰だかは知ってるのよ、俺ゃ」 いいながら、男が立ち上がる。 「仕事でやってんだ。お前は違いそうだな」 間合い。わずかに遠い。お互い、不意打ちはできない。少なくとも拳では、だ。足はどうか。 「答えたくねえってか。まあいいさ。じゃあこういうことよ」 男が、左手を腰にあて、右手のひらを低い位置で開いてみせた。 「俺はあのアマをぶっ潰せりゃいいんだが、そりゃどうも無理そうでな。だからこれ以上なんかやるのは割にあわねえ。損ばっかりでな」 男は、少しだけ右腕の怪我をみた。 「そこにきてお前よ。お前とやり合うのは割にあわねえどころか、意味もねえ。この辺りにしねえか、おい」 「なるほどな」 「お前にだって悪い話じゃねえだろう」 構えを解いて、両手を腰にあてた。男の笑いに、下卑たものが混ざる。 「ずいぶん」 「ああ?」 「安っぽいやつだな、お前」 男の顔に張り付いていた笑みが消えた。かわりに滲み出てくる、凄み。いや、なにか凄惨なもの。 「残念だ」 言った瞬間、男の左手が背中に回った。こちらも回す。 回した手を前に突き出したのは、ほぼ同時だった。相手の手の中に、鈍色に光るものがある。オートマチックタイプの銃。 「へえ」 男が、唇の片側を吊り上げて言った。どうやらこういう笑い方らしい。 「いいおもちゃを持ってるじゃねえか、え。どこで買ったんだ、あんちゃん」 こちらの手にあるのは、銃と似たシルエットではあるが、まったく違うものだ。見た目にも、たいしたものではない。 だが、これがたしかに人を殺していた。一撃。どういうものなのか判らないが、撃てば、威力はある。 「撃てば、お前は死ぬぜ」 口にしてみた。男。やはり、笑っている。 「死ぬぞ」 「やってみなよ、え。いいおもちゃだからな、そりゃ」 不意に、破裂音がした。それと同時に、右太股をなにかが通り抜けた。膝が折れる。 何が起きたのか。アスファルトがそばにあった。呻き声。自分の声である。それを聞いてから、猛烈な痛みに襲われた。 撃たれた。そう気付いたのは、男の笑みを見上げてからだった。 「撃てやしねえくせに」 全身からいやな汗が噴きだしている。暑いはずなのに、背中のあたりに寒気がはしる。太股。撃たれたあたりを左手で必死に掴んだ。右拳で、左手を押さえつける。 指の間から漏れ出してくる、血の感触。とにかく、なんとかして止めなければ。 「お前、あれの男かなんかなのか、おい」 男の爪先が、腹に食い込んできた。 「ざまがねえな、お前」 さらに、腹。だが、あまり痛みはなかった。苦しさも、たいしてない。からかっているのだ。足の痛みと熱さが、怒りで一瞬、弱くなった。 いきなり、髪を掴まれた。引き上げられる。弱くなった痛みが、また暴れだした。男の顔。唇の片側を吊り上げた笑みではなかった。亀裂のような笑み。 「悪ぃがよ、あの女にゃ勝てなくても、お前とは違うのよ」 こいつは。腹の底でなにかがうねっているような気分になった。痛みがそれを、さらに掻き回す。 頭を後ろに飛ばされた。コンテナ。頭はぶつけなかったが、背中を強く打ちつけて、一度呼吸が止まった。足が痺れる。 「ちょっかい出さなきゃ死ななかったんだぜ。後悔するんだな」 また銃声。今度はすぐに痛みがきた。右肩。頭の奥が熱くなり、背中が冷たくなる。傷口の内側で、何かが暴れ回っているような感じだ。 今まで感じたことのある痛みではない。はっきりとそう思うことが、かえって意識を束ねている。この男。怒りや憎しみが、恐怖も抑えていた。 激痛のなかに、なにかはっきりしたものがあった。傷口の内側だけではない。自分のなかで、何かが暴れはじめている。 頬を、なにか硬いもので張られた。 「馬鹿だよ、あんた」 男が、前髪を掴んで、顔を近付けてきた。いつの間にか、しゃがんだのだろう。 馬鹿はお前だ。言ったつもりだが、口には出なかったのかもしれない。男が、なんだという顔をした。 そうしていればいいさ、慢心野郎。 男の指を曲げる。反動はほとんどなかった。男が、一周顔を引きつらせたと思うと、あっと声を発した。 男の右肘あたりに当たったのだ。みるみる血がひろがってゆく。水気の多い、小さな破裂音。聞いていた。男が、また声をあげた。 銃。右手から取り落としている。 「てめえっ」 男が、右腕を抱え込みながら、顔をあげた。苦痛が張り付いたような、歪んだ顔。爬虫類のような顔は吹き飛んでいる。 残酷なものがよぎった。腕をあげる。痛みが、なぜか消えた。 「待てっ」 上体を持ち上げて男が言い終わる前に、引き金を引いた。一瞬、男の体が折れた。同時に、腹に染みがぱっとひろがった。シャツが内側から、見る間に膨らんでゆく。 男が、掠れた呻き声をあげて、尻餅をついた。そのまま、コンテナによりかかる。そしてそのまま、男は動かなくなった。 ふと見ると、伸ばしきった右脚の踵まで、男の血が押してきていた。いや、これは自分の血かもしれない。どこまでがどっちの血か判らなかった。 勝った。血のにおいが鼻をついたとき、ふと感じた。 だが、無双は。無双はどうなったのか。そして量子は無事なのか。ヤマは。 不意に、傷口が痛んだ。ひとのことより、自分をどうにかしなければ。思ったが、それもすぐに消えた。 死ぬのだろう、俺も。それを、ただあることとして受け止められるような、そういう気持ちになっていた。 あいつもこういう場所で死んだ。いやな縁だが、そういうものかもしれない。 一度、目の前が暗くなった。 マスター。生き残っているだろうか。お前ひとりに背負わしちまうことになるな。すまないが、頼むぜ。 日差しが、肌を焼くようで痛かった。顔だけ、左に背ける。 人がいた。気のせいか。いや、こちらに向かってくる。体の半分ほどが日に当たって、そこだけ浮かび上がっているようだった。スーツのジャケット。 高城だった。 「修羅場だな」 いつの間にか、高城は脇まできていた。 「見たくない顔だ」 「頭ははっきりしているようだ」 死ぬ前に見るのが、この辛気臭い顔か。うんざりしたが、そういうものかもしれない。 「死なせんよ、お前は」 複数の足音が聞こえた気がした。迎えがもう来てる。高城。意識が遠のいた。 「量子が」 「いるのか、この先に」 頷いたつもりだったが、頭は動かなかった。だが、高城はわかった、と言った。 「お前は先に行って、休んでいろ。あとは私がやろう」 この野郎、凄みのある声を出しやがって。高城の背後に、黒い影がゆらめいて見えた。 影。そう思った途端、目の前が真っ暗になった。